TOGA DESIGNER
YASUKO FURUTA
  TOGA


アンダーグラウンドな独特の匂いを漂わせ続けているブランド
イノセントとアンダーグラウンドの融合


デザイナー:古田泰子
エスモードジャポン/エスモードパリでファッションデザインおよびパターンを学ぶ
1997年、TOGAを立ち上げ、自身のはじめてとなるブランドが東京を拠点にスタート
2003年毎日ファッション大賞新人賞受賞
2005年コレクション発表の場をパリへ
2007年フランス国立モード芸術開発協会主催の ANDAM 賞受賞
2009年再び毎日ファッション大賞受賞
2014年コレクション発表の場をパリからロンドンへと移す
現在、ショーによる発表を続けるメインコレクションTOGAの他
プレコレクションTOGA PULLA
ユニセックスラインTOGA ARCHIVES
メンズウェアTOGA VIRILIS などがある




モードと古着、量産と一点もの.

量産の服が並ぶ後ろで、古着も混ぜて存在するのが理想形
私が見せたいのは、服の歴史の構図です.
TOGA の服も、いつかは古着になるわけで...

ヴィンテージという言葉そのものを、普段からあまり使わないようにしています.
私はそもそも、価値や評価が決まっているヴィンテージショップより
セカンドハンズショップのような場所に足が向きがちなので...

今や量産のアイテムも古着として出てくる時代です.
古着というのは時代の表層であり、その時々で流行ったものが後になって出てくる.
そう考えれば、量産された古着にも魅力はあって、私はそういったものも拾い上げて混ぜていきたい.

- TOGA の服には、ナイロンや PVC、メッシュなどチープな素材使いや引っかかりのあるディテールも多いですね?
なんでこんなこと考えちゃったんだろう?
って、思わず手が止まるような古着ってありますよね?
TOGA の服も、いつかそうなってほしい.
バックグラウンドを匂わす服になってほしいといつも考えながら作っています.



The Fashion Post(https://fashionpost.jp/より)



気に入られるためのファッションではなくて.

「今海外でオーディションをすると男の子も来るようになりましたが
ユニセックスを売りにしている人を打ち出しのために起用するようなことはしません.
似合うと思えばどちらでも構わないし、
ジェンダーがわからない人が来てもどちらなのか聞くこと自体が
ナンセンスだと考えています.
ロンドンでコレクションを発表するようになって、
そういう感覚が今、時代のなかにあると強く感じるようになりました.」

「しかし残念ながら日本ではそうした価値観がまだ希薄で、欧米との差を感じます.
ジェンダーに限りませんが “言い出せない”という少数派の人たちをサポートしたり
好きなことをやって、そのままでいいと言えるのがファションの役割のはず.
だから私たちがより寛容になって、少数派を認める姿勢をブランドという立場で肯定していきたいと思っています.」

「気に入られることこそが自分の抵抗だと思い込み、
それがファッションにまで取り入れられてしまっている状況を変えたい」
現代のフェミニズムに対する一般的な解釈には誤解も多く、
その言葉自体がマイナスに捉えられてしまうほど日本は遅れをとっている.
誤った伝統や既成概念から自由になり、
より先進的な方向へと時代を牽引するのがファッションのあるべき姿だが...

古田は、未来の作り手を輩出するはずの教育機関のあり方にも懸念を示す.
「先日、某大学のオープンクラスで講義をする機会をいただきました.
その時驚いたのが、壇上の講師が一方的に話をしてそれが全部終わった後に
『何かありますか?』と学生に聞くんです。
その時はもう、さかのぼって話ができる空気じゃないんですよね.
必要なのは、自分の意見と人の意見をどう擦り合わせるかとか、
自分が本当にやりたいことをするために相手を説得するための実践的な学習です。
同じ環境に長く身を置くことで盲目にならないよう、
世の中で起こっている音に敏感に反応して、常に考え続けたいと古田は話す.
その姿勢は、TOGAの世界観を強く色付けている音楽や現代アートに精通した彼女の感性にも通じている.
i-D(https://i-d.vice.com/jaより)




- そうした交流の場を通して、ファッション以外のジャンルの方々とお話しする中で、
ファッションの役割を考えることはありますか?

古田:
日本では、ファッションの重要性を言葉で説明し、
デザインの担う役割を伝えられる人が少なく感じます。
パリに留学していた時に「洋服の勉強をしている」と伝えると、
文化的な役割を果たす分野として敬意を持って接してくれる方が多かったです。
洋服に関する根付きの違いなんだと思いますね。
日本はどちらかというと表層的で、流行りを追いかけている人という印象が強いのかなと。
中身なく着飾っちゃってさ、みたいな。


- そうですね。日本では特に表層のイメージだけで、
先ほどお話しされたようなファッションを通して
音楽や歴史のルーツをたどれる奥行きのある媒体として見られにくいところもありますよね。
そんな時、古田さんは相手にどのようにファッションのことを伝えていますか?

古田:
まず、作り手として何が服において必要で面白いかということをとても真剣に考え、
その背景や歴史をきちんと発信することで興味を持ってもらえるようにしています。

どうしても年に4回発表していると、無駄に作って廃棄している巨大なマーケットのイメージが
目に留まりやすいのかもしれない。
でも3ヵ月後の未来を予測して定期的に発表できるチャンスは、
ファッションでしかできないこと。
その時代に合わせていち早く反映できる利点を持っていると思います

-「トーガ」は2014年からショーの発表の拠点をロンドンに移しました。
ロンドンを選んだきっかけを教えてください。

古田:
ロンドンで発表していると、クリエーションと社会貢献を一緒に問われることがスタンダードなんです。
バックステージのインタビューでもサステナビリティの活動や、
企業理念などデザイン以外での質問も多く、伝統的な側面に価値を置くイギリスですが、
動物愛護についてデパートが毛皮の使用禁止に早い段階で声をあげたりと、
問題提起への俊敏さに居心地の良さを感じます。
性別関係なく対等に肩を組み合っている感じも「トーガ」を表現する上で合っていると感じました。

- ファッションもある種の自分の意見をコミュニケーションする手段の1つですよね。
古田:
そうですね。実は一番きっかけが作りやすいアプローチだと思います。
自己アピールできる1つの手段がファッションです。
「TPOをわきまえる」という言葉も、夜の装い、大事なミーティングなど
それぞれのシチュエーションに合わせて自分で服装を選ぶという大切な行為。
リクルートスーツを着るような意味で使われて、その人の色が見えなくなってしまっては、
ファッションの本来の役割を果たせていない。
自身を表現しやすい社会にするためにも、まだまだファッションができることはたくさんあると感じています。

(TOKION 連載:時の音〜「トーガ」のデザイナー古田泰子インタビュー
https://tokion.jp/2023/07/03/tokinooto-vol21-yasuko-furuta/より)